おおむかし、ある村に、いつも「子どもがほしい、子どもがほしい」と思っている、としよりの夫婦がすんでいました。おばあさんが悲しんでいると、白いかみの老人があらわれて、ひとつぶのめば子どもがひとり生まれるという小さな丸薬を九つくれました。おばあさんがその丸薬をのむと、まもなくおなかがふくらんで、ある日とつぜん、九人のあかんぼうが生まれたのです。 その名も、「ちからもち」「くいしんぼう」「はらいっぱい」「ぶってくれ」「ながすね」「さむがりや」「あつがりや」「切ってくれ」「みずくぐり」という変わった名前。 九人が成長したころ、王さまの宮殿で、いちばん大事なはしらが倒れてしまいました。困った王さまは「はしらをもとどおりにできたものには、のぞみのほうびをとらせる」とおふれを出すのですが・・・。
中国の少数民族、イ族のあいだに伝わる、痛快な物語絵本。 九人の名前は、九人にそなわった能力をあらわしています。 「ちからもち」に宮殿のはしらをなおしてもらったのに、ほうびをとらせるどころか、その能力を怖がって次々無理難題をふっかける王さまに、きょうだいは能力を生かしてたちむかい、ついにはひどい王さまをやっつけてしまうお話です。
子どもたちが(そして読んでいる大人、私も)大好きなのが、そのいっぷう変わった名前と、そっくりに見えるのに少しずつ違うきょうだいの絵!! あかんぼうのページですでに赤いあかんぼう(おそらく「あつがりや」)や、指をくわえているあかんぼう(同じく「くいしんぼう」)、足の長めのあかんぼう(「ながすね」)がいたりして、どのあかんぼうがどの名前?と探してみるのも楽しいです。
絵は『スーホの白い馬』で著名な赤羽末吉さん。不機嫌な王さまの表情といい、悠々とした中国の風景といい、ユーモラスな構図や絵筆の色合いといいすばらしい。 訳は、中国の民話や昔話を多数翻訳している君島久子さん。きょうだいがくりかえし王さまの難題を一蹴するくだりは、名前のおもしろさとともに、何度読んでも飽きません。 “「ぶってくれ」は(略)うれしそうにいいました。「ああ、いいきもちだ! もっと、ぶってくれ!」”・・・という具合です。 さすがは1969年発売以来、読み継がれているロングセラー。 絵本としては文字は多めですが、テンポよく読めます。明るくたくましい民話の世界が見事に再現され、子どもが成長しても、心に残りそうな傑作絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
子どものいないおじいさんとおばあさんのところに、ある日9人も赤んぼうが生まれました。ちからもちに、くいしんぼう、はらいっぱい、ぶってくれ、ながすね、さむがりや、あつがりや、切ってくれ、みずくぐり。このきょうだいが成長したとき、王さまがつぎつぎと難題をふっかけてきました。――中国の少数民族のお話の傑作絵本です。
お友達に紹介してもらって
5年生と3年生の読み聞かせに使いました。
およそ13分もの長いお話。
でもこの長さもものともしない面白さ、テンポの良さはピカイチ。
子どもたちも飽きずに真剣に聞いてくれました。
九人のきょうだいの奇妙な名前でまずは笑いが起き、
それぞれが巧いこと活躍して王さまを負かしていく様子が
小気味良いです。
ここまでテンポが良いと低学年に至っては
ページをめくるたびに
「次はあつがりやが来るぞ!」とか「ながすね、すっごい足が長い!」などまるで参加型のような賑やかな反応が見られます。
ほぼ小学生全学年で外さないお話ではないかと思います。
強力にオススメします。 (さえら♪さん 40代・ママ 女の子7歳)
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