ある朝、なかよしのことりが死んでしまって・・・。物語はちょっとショッキングな出来事で始まります。くまは泣きながら木箱を作り、花をしきつめ、ことりをそっといれます。
大事なものを失くしてしまう、という感覚は、誰の身にも起こりうる事だけど、その心の痛みを代わってあげるということは決してできません。例え、それが小さな心の持ち主であろうと。 くまが箱の中のことりを見せる度に、周りの動物達はとまどう。そして忘れて乗り越えるように諭します。このやりとりには、心を締め付けられるようです。 でも、ここで話は終わりません。ある日、くまは外がいいお天気なのに気がつくのです!そして、小さいけれど大切な出会いをしていくのです。心の再生に合わせるかのように、景色にも色がついていき・・・。テーマは大きくても、子ども達に向けて優しく描かれている「死」についてのお話です。
酒井駒子さんの心のこもった絵と合わさると、読み終えた後、音楽を聴き終わった様な、静かな感動を覚えます。絵本を通して、「時間と音楽」が、こんなに尊くて素晴らしいものだと気がつかせてくれます。こんな体験はなかなか出来ないと思います。湯本香樹実さんと酒井駒子さんの夢のコラボレーションです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
突然、最愛の友だち・ことりをなくしてしまった、くま。 くらくしめきった部屋に、ひとり閉じこもっていたくまが やがて見つけた あたらしい 時の かがやき。
だって、ぼくたちは ずっとずっといっしょなんだ
<あらすじ> 突然、最愛の友だち・ことりをなくしてしまった、くま。 くまは手作りの箱に花びらをしきつめて、そっとことりを入れ、持ち歩くようになります。 箱の中を見るたびに、こまった顔をする森のどうぶつたち。そしてみんな決まって言うのでした。 「くまくん、ことりはもうかえってこないんだ。つらいだろうけど、わすれなくちゃ」 くまは、くらくしめきった部屋に、ひとり閉じこもってしまいます。 でも、やがてくまにも、光あふれる、あたらしい時がおとずれて……
湯本香樹実×酒井駒子 夢のコンビで贈る感動の絵本 小説「夏の庭 ―The Friends―」でボストン・グローブ=ホーン・ブック賞等 を受賞した湯本香樹実と「金曜日の砂糖ちゃん」でブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)金牌等 を受賞した酒井駒子。 世界的に注目を集める二人が初のコンビで描く、感動の絵本。
大好きな酒井駒子さんの絵。
でも、この絵本はあまり読みたくありませんでした。
子どもが生まれて、決して失いたくないものができたおかげで強くなったけれど、弱くもなりました。
大切な人を失ったら、どうしたらいいのだろう。
だから、私はシリアスな絵本はあまり近づけなかったのです。
それが、東日本大震災が起きて、いろいろな戸惑いを経て、少し気持ちが変わり、読んでみました。
くまが失ったことりを箱に入れて持ち歩く描写は、その美しさゆえに余計に読んでいてつらいものでした。
学生の時読んだ、キューブラ―・ロスの死ぬ瞬間(死を迎える人は否認と孤立→怒り→取り引き→抑鬱→受容という気持ちの流れがある、といった内容)を思い出したりもして。
くまが悲しみを受け入れられたのは、なぜだったのでしょう。
なにがあっても流れていく時間、晴れた空、同じ悲しみを受け入れたやまねこの優しさ、音楽、ことりとの輝いていた思い出が消えないことに気付いたから、でしょうか。
死が悲しいのは、それだけ生が素晴らしかった証拠なのですね。
重いテーマを湯本香樹美さんが優しく丁寧な物語を紡ぎだし、
酒井駒子さんが、生と死に通じるような、光と影を感じる黒っぽい絵で描きだしています。そして、少しずつ色づく印象的な赤。
大人のための絵本の名作だと思います。 (ランタナさん 30代・ママ 男の子8歳、男の子5歳)
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